【2026年ゴールド展望】1月急落が示した相場変化と今後の注目ポイント
2026年1月末、ゴールド相場は過去最高値(5598ドル付近)を更新した直後、わずか2日後には長い実体を持つ陰線のローソク足が出現し、4680ドルの安値を付けました。1000ドル近くの急落となり、驚いたトレーダーも多かったのではないでしょうか。
多くの経済ニュース報道はFRB次期議長人事を理由として伝えましたが、急落後にチャートを確認すると、テクニカル的な過熱サインが先行していたことが分かります。
日足RSI(相対力指数)は90を超え、週足の下降ダイバージェンス、月足RSIは96超え ― これらは過去10年間の中でも最も水準でした。
この急落は、2026年のゴールド相場を見るうえで重要な示唆を与えています。上昇トレンドは継続するのか、それとも調整が深まるのか。とても気になるこの疑問の答えを、テクニカル分析で紐解いていきましょう。
※本記事で扱う価格はすべて対米ドル建て(XAU/USD)です。
【第1章】1月急落から見えた過熱サイン
複数時間軸で極度の過熱が確認されていた
1月28日、ゴールドは過去最高値を更新しました。振り返ると、この時点で複数の時間軸がテクニカル的な過熱を示していました。
日足ではRSI 90.24、100日SMA(100日単純移動平均)からの乖離率+30%という水準に達していました。日足RSI 90超えは、過去10年間で最も高い水準です。これらの数値は、“上昇の勢いが限界に近く、いつ価格が調整してもおかしくない”状態を示します。
さらに、週足では下降ダイバージェンス(価格は高値更新、RSIは切り下がり)、つまり、見た目は強いのに相場全体の勢いは弱っている ― そんなズレが出ていました。
また、月足ではRSI 96.04という極度の買われ過ぎを示していました。月足で96というのも、私の相場人生の中では見たことがない数値です。

翌1月29日は長い上ヒゲと下ヒゲを伴う陰線となり、RSIは85台まで低下しました。RSIを見ると、売り圧力が徐々に強まっている様子が分ります。この状況は、テクニカル的に見れば「調整が入る地盤が整っていた」状態と整理できます。
つまり、追いかけ買いよりも“利益確定・様子見が優位”になりやすい局面だった、ということです。
FRB人事は「最後きっかけ」だった
1月30日、FRB次期議長人事の報道を材料に、ゴールドは長い陰線を形成して、急落しました。RSIは55付近まで低下し、価格は100日SMAから約+15%を少し上回る価格帯で、ようやく落ち着きました。
英語には「最後の一本の藁(わら)が駱駝(らくだ)の背を折る」という表現があります。原因は最後に起きた出来事ではなく、それまでの積み重ねにあった、という意味です。今回の急落も同じ構造でした。
重要なのは、FRB人事そのものよりも、すでに相場が限界に近づいていたという点です。日足RSIが90超え、週足の下降ダイバージェンス、月足RSI96超えといった過熱サインが重なり、調整が起きやすい状態が続いていました。
ニュースは解釈が分かれやすく、一般のトレーダーが知る頃には相場がすでに動いていることも少なくありません。一方、RSIや移動平均線からの乖離率といったテクニカル指標は、数値として誰でも確認でき、事前の検証も可能です。
この点に、実務でテクニカル分析が重視される理由があります。
テクニカル的に妥当な反発水準
2月2日(月)の下ヒゲは100日SMAから+5%付近で反発し、終値は+10%水準まで戻しました。RSIは55付近となり、中立圏まで戻したことで売り圧力は後退したと見られます。
その後、5000ドルという心理的な節目を上抜ける動きが見られています。2月10日時点では5000ドル以上での推移が続いており、この水準が上値抵抗から下値支持に転換するかが注目されます。テクニカル的な地盤が、今回の価格形成を主導していた可能性が高いと見る方が自然でしょう。
テクニカル分析から見た今後の注目水準
1月の急落と反発を踏まえると、今後の価格推移において以下の水準が重要になると考えられます。
上値の焦点:5598ドル(直近高値)
この水準を明確に上抜け、終値ベースで維持できれば、上昇トレンド再開の可能性が高まります。ただし、上抜け後もRSIが90を超えるような過熱は警戒が必要です。1月の教訓から、極度の過熱後には調整が入りやすいと認識しておくべきでしょう。
下値の焦点:4700ドル〜5000ドル
5000ドルは2月初旬の反発局面で機能した水準です。今後、この水準を明確に割り込んだ場合、次のサポートは100日SMAから+5%付近(4700ドル前後)となります。2月2日の反発がこの水準で確認されたため、再び同水準での反応を見極めることが重要です。
さらに深い調整となる場合、100日SMAそのもの(現在4400ドル前後)が最終防衛ラインとして機能する可能性があります。この水準を割り込むと、上昇トレンド自体の見直しが必要になるでしょう。
当面の攻防:5000ドル〜5300ドル
2月10日時点では、5000ドルを一時的に上抜ける動きが見られています。この水準が上値抵抗から下値支持に転換し、終値ベースで5000ドル以上を維持できれば、上昇再開への足掛かりとなります。
一方、5000ドルを再び割り込む展開となれば、この水準での攻防が続く可能性があります。この範囲での推移が続く場合、次の方向性を決める材料(FOMC声明、地政学リスクの変化など)待ちの状態と整理できます。ただし、テクニカル的には方向感を欠く局面が長引くほど、ブレイク時のエネルギーが蓄積される傾向があります。
【第2章】2026年の展望|上昇継続か調整深化か
2026年の3つの分岐点
①FRBの利下げペース(春〜夏)
市場は2026年に複数回の利下げを予想していますが、実際のペースは不透明です。市場予想と実際の乖離が大きいほど、ゴールドは大きく動きます。FOMC声明文の表現変化と、実質金利(実質金利 = 10年債利回り − CPI)の推移を確認することが重要です。
ただし、ファンダメンタルズは解釈の余地が大きく、情報の伝達にも時間差があります。FOMC声明が出た時点で市場は既に動き始めていることも少なくありません。テクニカル指標と組み合わせて判断することが現実的なアプローチです。
②中国経済の回復度合い(第2四半期)
中国の製造業PMIと不動産市場の動向が、貴金属市場全体に影響を与えます。特にシルバー・プラチナは工業需要が主体のため、中国経済の影響を受けやすい構造です。中国人民銀行の金準備政策も注目されます。
③地政学リスクの再燃(随時)
中東・台湾・ウクライナ情勢が緊張すれば、安全資産需要が急増します。有事の際の「安全資産への逃避(Flight to Quality)」の構図は、2026年も健在と見られます。ただし、地政学リスクは予測が困難です。テクニカル的な過熱がない状況であれば、リスクオフ局面での買いは継続しやすいと考えられます。
上昇継続のシナリオ
これら3つの分岐点が、ゴールドにとって追い風になる場合のシナリオです。
FRBの利下げが市場予想通りかそれ以上のペースで進めば、実質金利の低下がゴールドを支えます。中国経済の回復や地政学リスクの高まりも追い風です。こうした環境が整えば、上昇トレンドは継続しやすくなります。
こうした環境では、ゴールドの上昇トレンドが継続すると考えられます。加えて、中央銀行の金購入も継続する見通しです。2022年から2024年まで3年連続で年1,000トン超の記録的なペースとなりました。
2025年も第3四半期までで約634トンに達しており、2026年には通年で900トン超が見込まれています(世界金協会)。この構造的な買い圧力が継続すれば、調整局面での下値を支える要因として機能するでしょう。
テクニカル的には、5598ドル(直近高値)の明確な上抜けが確認ポイントです。その際、100日SMAからの乖離率が+20%以内、RSIが70〜80で推移していれば、過熱し過ぎない上昇として継続する可能性が高まります。まずは5000ドルを固め、その後に上値を試す ― こうした段階的な展開が想定されます。
このシナリオでは、1月の急落は「上昇トレンド内の健全な調整」として位置づけられます。
調整深化のシナリオ
一方、3つの分岐点がゴールドにとって逆風になる場合のシナリオです。
FRBの利下げペースが市場予想より鈍化し、中国経済の回復が遅れる。地政学リスクが沈静化し、安全資産需要が後退する――こうした環境では、ゴールドの調整が深まる可能性があります。
特にFRBの政策スタンスが市場予想より慎重になれば、実質金利の低下期待が後退し、ゴールドの相対的な魅力が薄れます。また、米株の本格調整が起きてもリスクオフでゴールドが買われない状況や、ドル高の進行も、調整を深める要因となり得ます。
テクニカル的には、100日SMAからの乖離率が+5%を割り込み、RSIが40を割り込んで売り圧力が強まることが警戒サインになります。5000ドルを明確に下抜けた場合、さらなる調整が進み、4500ドル〜4700ドル付近(100日SMAから0%〜+5%)までの下落が想定されます。
このシナリオでは、1月の急落は「トレンド転換の初動」として位置づけられます。
2月時点での相場の位置づけ
これらの分岐点を踏まえた上で、現在のゴールド相場がどの位置にあるかを確認しておきましょう。
2月10日時点では、5000ドルを一時的に上抜ける動きが見られています。100日SMAから+10%〜+15%という水準は、「上昇トレンド内の調整」とも「調整深化の途中」とも解釈できる中立的な位置です。
5000ドルが下値支持として機能し、終値ベースで維持できれば、上昇再開のシグナルと捉えられます。一方、再び5000ドルを割り込む展開となれば、この水準での攻防が継続するでしょう。
次の動きを判断するには、上記3つの分岐点とテクニカル的な節目(5598ドル上抜けor 5000ドル割れ)を確認することが重要です。複数時間軸でRSIとダイバージェンスを監視し、過熱サインが再び出た場合は調整リスクを意識する材料になります。

【第3章】シルバー・プラチナはゴールドと異なる調整パターンを示した
1月急落での値動きの違い
1月末の急落では、シルバーとプラチナがゴールドより深く値下がりしました。この違いは、需給構造の違いから説明できます。
シルバーの特性と急落要因
シルバーは工業用途が60%を占めており、太陽光パネルや半導体などの製造に不可欠です。貴金属の値下がりが米株の調整を誘発し、「経済が冷え込む可能性」への警戒からシルバーの工業需要が先細りになる懸念が生じたと見られます。
テクニカル的に見ると、シルバーもゴールドと同様に過熱圏にありました。RSIは日足で80を超える局面があり、調整が入る地盤が整っていた状況です。ゴールドより下落幅が大きくなったのは、工業需要への懸念という追加的な売り圧力が加わったためと整理できます。

プラチナの特性と調整局面
プラチナは主要用途が自動車触媒(約40%)であり、EVシフトの影響で需要構造が変化しています。水素経済への期待もありますが、実用化には時間を要する見通しです。
1月の急落局面では、プラチナもシルバーと同様に調整圧力を受けました。工業用途が主体であるため、景気減速懸念に敏感に反応する傾向があります。テクニカル的には、移動平均線からの乖離が縮小する形での調整となりました。
ゴールドとの対比
ゴールドは投資需要が主体のため、工業需要の影響は限定的です。この違いが、急落時の値下がり幅の差として表れました。
それぞれの特性を理解した上で対象を選ぶ必要があります。ゴールドは地政学リスクや金融政策、シルバー・プラチナは工業需要 ― このように異なる要因で値動きが決まるため、同じ「貴金属」でも分析の視点は変わります。
【第4章】ファンダ×テクニカル統合の実践
筆者は日々、貴金属市場を含めたテクニカル分析を行い、レポートとして配信しています。FX、商品、暗号資産など幅広い市場を扱う中で実感しているのが、ファンダメンタルズとテクニカル分析を統合することの有効性です。
ファンダメンタルズは中長期的な構造変化の把握や背景理解に適していますが、解釈の余地が大きく、情報の伝達にも時間差があります。一方、テクニカル分析は数値で検証可能な過熱・調整の判断や、具体的な売買水準の把握に適しています。
統合の実践例(1月急落):
- ファンダ:中央銀行の買い圧力継続→上昇トレンドの背景
- テクニカル:日足RSI 90超え・週足ダイバージェンス→調整リスク高
- 判断:テクニカル過熱を優先し、利確または様子見
統合の実践例(調整後):
- ファンダ:中央銀行の買い圧力継続→下値は限定的
- テクニカル:+5%〜+10%で反発、RSI 50付近→調整一巡の可能性
- 判断:5000ドル上抜けを確認してエントリー検討
ファンダメンタルズで「背景」を理解し、テクニカルで「具体的な判断」を行う。この相補的な関係こそが、相場の本質を射抜く実務的な解と整理できます。
【まとめ】2026年は上昇継続か調整深化か
1月の急落は、テクニカル的な過熱という地盤が先行していました。ニュースは「最後の藁」に過ぎません。
2026年のゴールド相場は、FRBの利下げペース、中国経済の回復度合い、地政学リスクの3つの分岐点で方向性が決まります。テクニカル的には、5598ドル上抜けで上昇再開、5000ドル割れで調整深化というシナリオが想定されます。
ファンダメンタルズで構造を理解し、テクニカルでタイミングを判断する。この統合が、2026年の貴金属市場で精度の高い分析につながります。
【CTA】
本稿では、1月急落を“構造”として捉え直し、2026年の分岐点を整理しました。今後も、FOMCや実質金利、節目となる価格水準の反応を中心に、過熱と調整のサインを継続して追跡していきます。
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※本記事は市場動向の情報提供を目的としており、投資の推奨や勧誘を行うものではありません。情報の正確性・完全性について保証するものでもありません。




