注目の経済指標とイベント(8/31~9/4)
米国では雇用減速と物価圧力が併存しており、景気が悪化すればFRBが利下げに動くという単純な見方は成り立ちにくい。原油価格の上昇は各国のインフレ警戒を強める一方、成長鈍化への懸念も残る。市場では、高金利の維持と景気への配慮のどちらが政策判断で優先されるかを見定める必要がある。
USD/CAD(米ドル/カナダドル)は、長期の上昇基調を維持する一方、中期では調整が続いている。WTI原油(XTI/USD)は、長期的な弱さを残しつつ、短期から中期にかけて持ち直しを試している。USD/CADには短期的な戻り売り圧力が残り、WTI原油も上昇トレンドの勢いは限定的である。
今週は、ユーロ圏のHICP、RBNZとBoCの政策判断に加え、週後半の米ISMサービス業景況指数と米雇用統計が焦点となる。米雇用が弱くても物価圧力が残れば、FRBの判断は難しくなる。雇用と価格がともに鈍化すれば、利下げ期待が強まる可能性がある。ユーロ圏で物価が市場予想を上回れば、ECBの追加引き締め観測が改めて意識される可能性がある。
注目の経済指標とイベント(8/31~9/4)
| 日付 | 経済指標とイベント | 日本時間 |
| 8月31日(月) | 英国・休場(Summer Bank Holiday) | - |
| ORIGIN SEOUL 2026(~9/2) | - | |
| 日本・鉱工業生産/小売業販売額(7月) | 8:50 | |
| ニュージーランド・ANZ企業景況感(8月) | 10:00 | |
| 中国・国家統計局 製造業PMI/非製造業PMI(8月) | 10:30 | |
| ドイツ・消費者物価指数(8月) | 21:00 | |
| 米国・ダラス連銀製造業活動指数(8月) | 23:30 | |
| 9月1日(火) | NFT.NYC 2026(~9/3) | - |
| Real-World Asset Summit Brooklyn 2026(〜9/2) | - | |
| オーストラリア・住宅建設許可件数(7月) | 10:30 | |
| オーストラリア・経常収支(4-6月期) | 10:30 | |
| 中国・RatingDog製造業PMI(8月) | 10:45 | |
| 英国・ネーションワイド住宅価格(8月) | 15:00 | |
| ドイツ・製造業PMI(8月) | 16:55 | |
| ユーロ圏・製造業PMI(8月) | 17:00 | |
| 英国・住宅ローン承認件数(7月) | 17:30 | |
| 英国・製造業PMI(8月) | 17:30 | |
| ユーロ圏・消費者物価指数(8月 HICP) | 18:00 | |
| ユーロ圏・失業率(7月) | 18:00 | |
| 米国・S&P Global製造業PMI | 22:45 | |
| 米国・ISM製造業景況指数(8月) | 23:00 | |
| 米国・建設支出(7月) | 23:00 | |
| 米国・JOLTS求人件数(7月) | 23:00 | |
| 9月2日(水) | ニュージーランド・住宅建設許可(7月) | 7:45 |
| 日本・マネタリーベース(8月) | 8:50 | |
| オーストラリア・GDP(4-6月期) | 10:30 | |
| ニュージーランド・RBNZ政策金利 金融政策報告 | 11:00 | |
| 米国・MBA住宅ローン申請指数 | 20:00 | |
| 米国・ADP雇用統計(8月) | 21:15 | |
| カナダ・BoC政策金利 | 22:45 | |
| 米国・製造業新規受注(7月) | 23:00 | |
| EIA週間石油在庫統計 | 23:30 | |
| 米国・FRB地区連銀経済報告(ベージュブック) | 翌3:00 | |
| 9月3日(木) | オーストラリア・貿易収支(7月) | 10:30 |
| スイス・8月消費者物価指数(CPI) | 15:30 | |
| スイス・GDP(4-6月期) | 16:00 | |
| ドイツ・サービス業PMI(8月) | 16:55 | |
| ユーロ圏・サービス業PMI(8月) | 17:00 | |
| ユーロ圏・総合PMI(8月) | 17:00 | |
| 英国・サービス業PMI(8月) | 17:30 | |
| 米国・貿易収支(7月) | 21:30 | |
| 米国・新規失業保険申請件数 | 21:30 | |
| 米国・失業保険継続受給者数 | 21:30 | |
| 米国・S&P Globalサービス業PMI(8月) | 22:45 | |
| 米国・S&P Global総合PMI(8月) | 22:45 | |
| 米国・ISMサービス業景況指数(8月 総合) | 23:00 | |
| 9月4日(金) | 日本・家計調査/実質消費支出(7月) | 8:30 |
| ドイツ・製造業受注(7月) | 15:00 | |
| 英国・建設業PMI(8月) | 17:30 | |
| ユーロ圏・小売売上高(7月) | 18:00 | |
| カナダ・雇用統計(8月) | 21:30 | |
| 米国・雇用統計(8月) | 21:30 |
重要な指標・イベント
- 9月1日(火) ユーロ圏・消費者物価指数(8月 HICP)
9月10日に控えるECB理事会の判断材料として位置づけられる指標である。中東情勢を背景にエネルギー価格が上昇しており、インフレ再加速への警戒が市場で強まっている。総合HICPが市場予想を上回れば、ECBによる追加利上げ観測が強まり、ユーロ買いにつながる可能性がある。逆に予想を下回れば、政策姿勢が慎重に傾くとの見方が優勢になるだろう。あわせて、エネルギーを除いた基調的な物価上昇率の強さも確認しておきたい。 - 9月2日(水) ニュージーランド・RBNZ政策金利/金融政策報告
7月会合では政策金利が25bp引き上げられ、2.50%となった。今回は追加利上げの必要性や物価見通し、今後の金利到達点とペースについてのガイダンスが焦点となる。声明や金融政策報告で物価圧力への警戒が強調されれば、ニュージーランドドルの支援材料となりうる。反対に、景気減速への配慮や利上げ停止を示唆する内容であれば、金利見通しの低下を通じて通貨の重しとなる可能性がある。 - 9月2日(水) カナダ・BoC政策金利
7月会合では政策金利が2.25%で据え置かれ、これで6会合連続の据え置きとなった。今回も据え置きが中心シナリオとみられているが、原油価格上昇によるインフレリスクへの警戒が強く打ち出されれば、カナダドルの支援材料となる可能性がある。一方、景気減速や米国との通商関係への懸念が強調される場合には、カナダドルの重しとなりうる。声明における原油価格、国内需要、基調インフレへの評価を確認したい。 - 9月3日(木) 米国・ISMサービス業景況指数(8月)
9月4日の雇用統計を前に、米国経済の勢いを判断する材料が集中する週の一つである。8月に公表された7月分では、総合指数が小幅な改善にとどまる一方、仕入価格指数は上昇し、雇用指数は縮小した。今回も価格上昇と雇用の弱さが並存すれば、FRBが利下げに動く時期が後ろ倒しになるとの見方が広がり、ドル高と米国債利回りの上昇、さらに金や暗号資産への下押し圧力につながる可能性がある。反対に雇用と価格がともに軟化すれば、利下げ期待の高まりを通じてドルと利回りが低下する展開も想定される。総合指数に加え、新規受注、雇用、仕入価格の3項目を確認しておきたい。 - 9月4日(金) 米国・雇用統計(8月)
米国の政策金利見通しとドルの方向性を左右する、週内でも最大級の材料である。直近の物価指標が高い伸びを維持する一方、雇用面の判断材料はこれと異なる方向を示している。非農業部門雇用者数、失業率、平均時給を総合的に見る必要があり、これらが市場予想を上回れば利下げ期待の後退からドル高と利回り上昇が意識される。逆に雇用が弱く賃金上昇圧力も鈍化すれば、利下げ期待が強まる展開が想定される。ただし、雇用悪化が急速な景気後退懸念につながる場合には、株式や暗号資産にとって下押し要因となりうる点にも注意したい。
相場のファンダメンタル
為替市場では、米国の需要減速感と中東情勢を背景とするインフレ圧力が併存し、金融政策判断の難度が高まっている。2026年8月24日から8月28日の週は、日米金利差、物価上昇の粘着性、地政学リスクに伴う原油高が意識され、USD/JPY(米ドル/円)は159円台を中心に底堅く推移した。
2026年8月31日から9月4日の週は、ユーロ圏8月HICP、RBNZとBoCの政策判断、米ISMサービス業景況指数、米雇用統計が主要な材料となる。米雇用統計では雇用者数だけでなく、平均時給を通じた賃金上昇圧力の持続性が焦点である。中東情勢を受けた原油価格の動向も、インフレ見通しを通じて主要国の金融政策に影響を与える。
ドル相場は景気指標の強弱だけでなく、米国の物価高と雇用減速の綱引きで評価される。雇用の弱さだけでは利下げを正当化しにくく、欧州やニュージーランドでも物価対応が政策判断の制約となっている。USD/JPYでは、米国金利に加え、日銀の政策見通し、原油価格、通商摩擦を合わせて確認したい。一方向の金利差取引だけでは、値動きを十分に説明できない環境である。
テクニカル分析
米ドル/カナダドル(USD/CAD)
USD/CADの週足は、長期の上昇基調を維持する一方、中期では調整が続いている。価格は調整の過程でSMA(200)付近まで下落した後、反発を試している。SMA(200)付近で下値を維持できるかが、長期の上昇基調を評価するうえで重要となる。
LinReg(156)とLinReg(52)は上向きを維持しており、長期と中期の方向は上向きである。一方、LinReg(13)は下向きで推移し、価格はKAMAとVIDYAを下回っている。短期では戻り売り圧力が残っており、反発が継続するかを確認する必要がある。直近では下落後に反発する動きがみられるが、短期の下向き基調が終わったと判断するには、KAMAとVIDYAを回復する値動きが必要である。
外部環境では、USD/CADとDXYの26週相関はプラス圏にあるが、今週はBoCの政策判断やWTI原油、米加通商関係がカナダドル固有の変動要因となるため、DXY単独では方向を判断しにくい。DXY高でもUSD/CADが1.4040を回復しなければ原油高やBoCの姿勢によるカナダドル買いがドル高を相殺している可能性、両者が同時に進めばドル全体の強さが主導していると評価できる。また原油高でもUSD/CADが下落しなければ、供給不安を背景とした原油高か、米加金利差・リスク回避のドル買いが上回っている可能性を確認したい。
重要な節目としては、上方では1.4040、次に1.4160である。1.4040を回復して定着する場合、中期の調整が一巡し、上向きの動きが再開する可能性がある。さらに1.4160を明確に上抜ける場合、長期の上昇基調が強まるかを確認する段階となる。
下方では、SMA(200)が位置する1.3730が重要である。1.3730を週足終値で明確に割り込む場合、長期の上昇基調に対する評価を見直す必要があり、次の下値目安として1.3550付近が意識される。

WTI原油(XTI/USD)
WTI原油(XTI/USD)の週足は、長期的な弱さを残しながら、短期から中期では持ち直しを試している。価格はSMA(200)を上回っている一方、SMA(200)自体はわずかに下向きである。このため、長期の方向は明確に定まっていない。
短期ではLinReg(13)が上向き、LinReg(52)も明確な上向きを維持している。一方、KAMAとVIDYAの傾きが限定的で、価格もKAMAを下回っていることから、足元の反発だけでは、中期の上昇基調が明確に強まったとは評価できない。
今後は、下方では、75ドル前後に位置するSMA(200)を維持できるかが重要である。75ドルを週足終値で明確に下回る場合、67.55ドル付近が次の下値目安となる。一方、上方ではKAMAを回復したうえで95.90ドルを上抜けられるかを確認したい。95.90ドルを週足終値で上回って定着する場合、中期の上向き基調が強まる可能性がある。その場合、101.60ドルが次の上値抵抗として意識される。
XTI/USDとUSD/CADの26週相関では、Return相関はゼロ近辺にある。これは、直近の変化率同士の連動が限定的であることを示す。一方、Level相関は逆相関を示しており、中長期の価格水準では、WTI原油とUSD/CADが反対方向に動く関係が残っている。ただし、短期の方向を判断する際には、Return相関が弱い点を踏まえ、原油価格、BoCの政策判断、米ドル全体の動きを個別に確認したい。

※本記事の情報は市場の動向をご紹介するもので、投資の推奨や勧誘を行うものではありません。また、情報の正確性・完全性について保証するものではありません。
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